ニニギノミコト(瓊瓊杵命)
ニニギノミコトは、アマテラスの孫であり、高天原(天界)から葦原中国(地上)へ降り立った神様。
アマテラスの孫たちが地上に降臨したので、このことを「天孫降臨」という。
アマテラスは、降臨するニニギに八咫鏡・八尺瓊勾玉・草薙剣(三種の神器)と稲穂を渡し、「この稲を育てて葦原中国を治めなさい」と言った。
そこから、稲を高く積む場所として「高千穂」と名付けられた。
さらに、アマテラスは今の天皇の使命である「三大神勅」をニニギに託している。
一つ目は「天壌無窮(てんじょうむきゅう)の神勅」。
天壌無窮とは、この国の君主である自覚を持つこと。二つ目は「宝鏡奉斎(ほうきょうほうさい)の神勅」。
三種の神器の一つである八咫鏡(やたのかがみ)を渡し、「この鏡を見て、私利私欲で民を苦しめていないかを自省し、そこに『我』があるのならば取り除きなさい」と言う。
「かがみ(鏡)」から「が(我)」を取れば、「かみ(神)」となる。
神としての生き方を示したのである。そして三つ目が「斎庭稲穂(ゆにわいなほ)の神勅」。
稲を育て、この国を繁栄させるということ。
この三つの神勅を守ることが天皇の使命であり、125代未だにその神勅が守り続けられている。
これが、民衆が主役の慈愛で満ちた国づくりの根源である。
降臨後、ニニギはオオヤマヅノカミの娘コノハナサクヤビメに一目惚れして、妻にする。
娘を嫁がせる際に、父オオヤマヅノカミは姉のイワナガヒメも一緒に嫁がせた。
ところが、姉のイワナガヒメはあまり美しくなかった。
その姿を見たニニギは、姉だけを親のもとへ送り返してしまったのである。
イワナガヒメを送り返された父は、とても残念がった。
「娘を一緒に嫁がせたのには、訳がある。
コノハナサクヤビメを傍におくと、あなたは桜の花が咲き誇るように栄えるだろう。
イワナガヒメを傍におくと、あなたの命はたとえ雪が降り、風が吹いても、岩のように変わらないだろう。
しかし、このようにイワナガヒメを返されては、あなたの命は桜の花のように儚いものとなるだろう」。
こうして、今に至るまでニニギの子孫である天皇は、神の子であるにもかかわらず、その命は限りあるものになってしまった。
君が代の「細石の巌となりて」とは、子々孫々、岩のように永く続くという意味である。
しかし、神であるニニギもイワナガヒメを添えた父の意図を分かっていたはずである。
永遠の命を得て、二人の愛が冷め止むくらいならば、限りある命の中で出来得る限りの愛を捧げたい。
そう思ったのかもしれない。
愛を貫いたニニギノミコト。
イザナキ、イザナミ以降、神々は愛に生き、愛に死んでいったのである。